
ーVoice.05
ICT農業と
既存の農業技術との融合が
地域と全国の食を守る。
【ICT推進協議会 会長】平岡さん
【生産品目】
小麦(秋蒔き・春蒔き)、ビート、
馬鈴薯 (食用加工用)、大豆、アスパラ
【生産品目】
小麦(秋蒔き・春蒔き)、ビート、
馬鈴薯 (食用加工用)、大豆、アスパラ
【作付面積】約20ヘクタール(20町)
【作付面積】
約20ヘクタール(20町)

悩み事の解決から
一歩を踏み出したICT農業
私は現在47歳で、27歳で就農し今年で20年目になります(2025年現在)。主な生産品目は、秋蒔きと春蒔きの小麦、ビート、食用加工用の馬鈴薯、大豆、そしてアスパラと多岐にわたります。作付面積は20ヘクタールで北海道の広い土地で日々農業に励んでいます。
私がICT農業に足を踏み入れるきっかけとなったのは、アスパラ栽培の経験からでした。アスパラの収穫時期が畑作物の作付け・種まき時期と重なり、午前中をアスパラに費やして午後から畑作業という非常にハードな日々が続いていました。ちょうどその頃から局地的な雨が増え、昼過ぎに雨が降ることが多くなり、午前中アスパラを採っても午後の畑作業ができない日が頻繁にありました。そんな悩みを抱えていた時に、地元の先輩が自動操舵(そうだ)を使っていることを知り、これなら一人でも種まきができるかもしれないと思ったのが始まりです。
ICT農業技術がもたらす
品質の均一化
ICT農業技術がもたらす
品質の均一化
私が現在導入しているICT機器や技術は多岐にわたります。まず、トラクターには自動操舵システムを導入しています。これにより畑起こしから肥料撒き、種まき、移植といった主要な作業をより正確に行うことが可能になりました。肥料撒きに関しては、畑のムラをなくすための可変施肥(かへんせひ)技術も取り入れています。
特に重要だと感じているのは、種まきと肥料撒きです。自動操舵によって作物を植えつける間隔や列が、人間が作業するよりも正確にぴったりと揃うんです。人間が植え付けるとどうしても少し広めに間隔を取りがちですが、機械は正確に揃えてくれるので畑に植えつけられる作物の数が均一化し、生育が均一になります。この生育のムラがなくなることで最終的な品質の均一化にも繋がると考えています。

短期間での集中作業と、
生育の安定
短期間での集中作業と、
生育の安定
ICTを導入してからの具体的な変化や効果は非常に大きいです。例えばビートの移植作業では、以前は同じ面積でも1週間かかっていたのが、今では1日で蒔きおわるようになりました。また、馬鈴薯の種まき作業も以前は3人必要だったのが今では1人でできるようになりました。
これにより、単純な「省力化」だけでなく短期間で集中的に作業ができるようになりました。春先の天候が悪い年でも、以前は1週間〜2週間かかっていた種まきが、1日〜2日で終わるようになれば、作物の生育が揃いやすくなるというメリットもあります。
私にとってICT農業の導入による省力化は「入り口」であって「目的」ではありません。真の目的は、より良いものづくりと生育ムラの解消といったメリットにあります。これは、天候に左右されにくい安定した栽培を実現し、品質を向上させる上で非常に重要だと感じています。


既存の農業技術も
大切にしながら
ICT農業を活かす

新しい技術を地域全体に広げていく上ではいくつかの課題も感じています。美幌町は他の市町村に比べて個人経営の割合が高いとされています。だからこそ、ICT農業、特に省力化に繋がる技術は農家の戸数が減らずに維持できる一つのメリットになると考えています。
しかし一方で、地域全体で導入した機械の適切な使用を進めていくためには、知識習得や試行など努力も必要です。特にご年配の方や機械に詳しくない方でも使えるよう、常に勉強会などを実施していく必要があると感じています。
悪天候が続く中でも作業効率を格段に上げ、限られた時間を最大限に活用できるようになったことは大きな手応えですが、機械である以上は故障や不具合が必ず起きるということにも注意が必要です。その際に農作業を止めないようにするためには、やはりICT機器を使わない昔ながらの基本的な作業方法もしっかりと覚えておく必要がある、と考えています。

若手農業者にとってのICT活用の意義


若い世代が農業に参入し、ICTを活用する意義は非常に大きいと感じています。自動操舵や可変施肥といった便利な機械が当たり前に使えるようになってきていますが、それらを使いこなす上で最も大事なのは、基本的な作業方法を理解していることです。機械に不具合が起きた時でも、昔ながらのやり方を知っていれば作業を止めることなく対応できますし、最先端の技術が「何が便利で、何が不便か」を真に理解するためには、元々の作業体系を知っていることが不可欠です。最初から便利な機械がある環境で育った世代と、そうではない時代から技術の進化を見てきた世代では、その技術の「便利さ」に対する気づきが違うと感じています。
これからも美幌町の農業が持続していくためには、農家の戸数が減らない体制作りが必要ですし、ICTはそのための重要な手段の一つです。また、近年は肥料代や農薬代、機械の経費が数年前の倍近くになっているにもかかわらず、農産物の販売価格はほとんど変わっていません。だからこそ、農業においても経営指標をより重視しながら、AIなどを活用して数字を把握していくことが非常に重要になると感じています。これが最終的には、農家の減少を防ぎ、地域の持続と全国の食の確保にも繋がると思います。